【web読書】『世界一かわいい俺の幼馴染が、今日も可愛い』
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初投稿(2020年3月6日)当時「幼馴染ざまぁ」旋風が吹き荒れていた、『小説家になろう』の現実恋愛ランキング。
そこに切り込み、一気にその潮目を変えていった快作――
――のひとつ(笑)がこの作品。
知っている人にとっては、言うまでもないことかもしれない。
私はたまたまその経緯を知ることができたから、当初から注目をしていた。
ただ、これから読む人にとって、その成り立ちは「へぇ、そうなんだ」くらいのエッセンスにしかなり得ないような気がするので。
だから、あえて違う方向から紹介をしたい。
この作品にはふたつの軸がある。
ひとつは、凛とした美少女で、ちょっとだけ毒舌な、気心の知れた間柄である幼馴染が、あるきっかけからグイグイ迫ってくるというイチャイチャラブコメ。
もうひとつは、小説投稿サイトで小説家を目指す少年が、夢に向かって努力し、挫折し、乗り越えるという熱い青春の物語だ。
前者は、あらすじにも書いてある、この作品の表向きの売りで、と同時にこの作品が書かれることになった大きな原動力でもあるから、分かりやすい。
だが、お話を膨らませる上で、これだけでは足りないと作者が判断せざるを得ないところもあったのだろうと思う。
後者は、もともとは単に『なろう』で幼馴染ざまぁが流行っている、それを発見して「つらたん」と表明する、そのためだけに作られたのだろう小説家志望という設定を、大きく掘り下げたものだ。
だが、結果的にこれが『なろう』で小説家を目指す皆へのエールに、そしてこの作品の深みにもなっている。
縦糸と横糸。
このふたつが織り合わされた時、そこに生まれるのはタペストリーのような美しい織物芸術だ。
喫驚すべきことに、これを走りながら(書きながら)組み立てていったと言うのだから、その構成力には舌を巻くしかない。
もちろん、甘々なラブコメが好きな人には薦めたい。
でも、もっと薦めたいのは、小説家になろうと頑張るすべての人たちに。
あるいは、かつて小説家になりたかったすべての人たちに。
この物語を。