【読書】『天鏡のアルデラミン』
本年度「このライトノベルがすごい!」ランキングで堂々の2位を獲得した作品。
どれほどのものかと興味に駆られ、手に取ってみることにしました。
斜陽の帝国にて、臣民として生きる主人公イクタたち。
彼らは、それぞれのかかえる事情により、帝国軍の採用試験を受けることとなります。
しかし試験会場に向かう船の上で、まさかのトラブルが発生。
予想外の苦難が彼らを襲います。
主人公イクタの奇抜な発想と、それぞれの特技を生かして、困難を乗り越える一行。
その後に待ち受ける数奇な運命。
怒涛の展開が彼らを、そして読者を翻弄します。
とはいえ、戦術レベルでの面白味はあるものの、どちらかと言えば地味な印象。
(むしろイクタの年上好き、色好みな部分は、ラノベ的には異端なきらいも?)
軍記物として読めば、佳作といったところか? と思いつつ読み進みました。
その感想を、いい意味で裏切られたのが、第1巻のラスト。
思わず息をのまずにはいられませんでした。
それは、ありそうでなかった。
確かに、皇女シャミーユとイクタの二人でなければ、成しえない偉業。
帝国という枠の中、世界観に生きる全ての人たちには、たとえ思いついたとしても実行不可能。
――でも、僕たちは、偶然にもそれができてしまった国を知っている。(ここ傍点)
優れたファンタジーは、奇しくも、現実世界の何かを、より純粋な形で露呈させます。
作者自身がそれを意図するか否かにかかわらず。
それがファンタジーの魅力の一つだと思っています。
そういう意味で言うなら、この作品は間違いなく、優れたファンタジーのひとつと言えるでしょう。
余談はさておき、とてつもなく大きなゴールが示されたことで、物語は大きく動き出します。
現在4巻まで刊行、まだまだ続きそうなスケールの大きなお話です。
この先が楽しみな作品が、またひとつできました。